令和5年度 施政方針

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印刷 ページ番号1033609 更新日 2023年2月27日

施政方針演説

 第12回市議会定例会の開会に当たり、令和5年度の市政運営に対する所信を申し上げ、議員の皆様並びに市民の皆様のご理解、ご賛同を賜りたいと存じます。
 

一 はじめに

 昨年12月に、市民の皆様の信託を得て、尼崎市長に就任をしてから、山積する尼崎市の課題に対し真摯に向き合い、一つひとつ丁寧に解決していくことを心掛けてまいりました。

 とりわけ、令和5年度の予算編成に当たっては、市政は市民の生活を守るためのものであり、どの分野においても必要としている市民がいることをしっかりと念頭に置きながら、財政規律を重視しつつ、必要な施策は確実に手当てをするという思いのもと、行政の継続性と新規性のバランスを十分に留意しながら作業を進めました。

 一方で、財政運営は、未来志向でなければなりません。尼崎市の持続可能な成長を期し、ファミリー世帯の定住・転入促進、地域経済活性化等、成長と分配の好循環を作り出していくための足掛かりとする観点から、各分野の施策の重点化を図りました。

 令和5年の干支である「癸卯(みずのと・う)」に相応しい、これまでの努力が花開き実り始め、次の繁栄や成長につながっていくような一年となるよう、所信表明でも申し上げた5つの柱を踏まえながら、各分野の政策を前向きに進めてまいります。

 

二 令和5年度予算の主な事業

 それでは、令和5年度予算編成の主な事業について申し上げます。
 

1. 「子育てのまち」、「学びたいまち」あまがさき ~子ども・教育~

 まず、「子育てのまち」、「学びたいまち」あまがさきです。
 少子化による人口減少が進行している中で、安心して子どもを産み、育てることができる環境は、これからの持続的な経済社会を運営していく上で非常に重要です。子育て・教育分野は国による制度的裏付けを前提としつつも、各基礎自治体における地域の実情を踏まえた対策が、極めて大きな意味合いを持つ分野であると考えています。
 尼崎市が、「子育てするなら尼崎」、「学ぶなら尼崎」と思っていただけるようなまちとなるよう、子育て支援の充実・子育て負担の軽減などのソフト戦略と、ファミリー世帯にとって良好な住環境の整備に向けた取組とを両輪で進めてまいります。


(子育て支援)

 そのために、まずは、子育てにかかる経済的負担の軽減を図るため、公約でお約束した「18歳までの子どもの医療費の無償化」に向けた取組の第一歩として、外来受診率が相対的に高い就学前の子どもを対象に、所得にかかわらず医療費を完全無償化します。

 そして、子育ての不安や悩みを抱える妊産婦への支援を充実させる観点から、産婦健康診査費用を助成するとともに、体調不良などにより家事育児が困難な妊娠中及び産後の子育て世帯に対して、ホームヘルパー派遣にかかる費用の一部を助成し、負担の軽減を図ります。

 また、引き続き、喫緊の課題となっている待機児童対策の強化の観点から、保育の供給量が不足している地域に認可保育所を設置する運営者に対し、その費用の一部を補助し、保育の量の確保に努めます。

 さらに、老朽化した法人保育園の建替えや大規模改修の費用の一部を補助するとともに、清掃業務や遊具の消毒など、保育にかかる周辺業務を行う保育支援者の配置を補助し、保育士の負担軽減及び働きやすい環境を整備することで、保育環境の改善を図ります。

 なお、少子化が進む中、近い将来保育ニーズが頭打ちを迎えることも想定されます。そのため、保育の量の確保に当たっては、利用者及び事業者のそれぞれが不安を抱えないよう、これらの取組と併せて、エリア別の保育の量の推計などの分析を行うとともに、公立保育所の在り方も含めた様々な角度からの検討を進めます。

 また、一層の不足が見込まれる保育士の確保・育成を行うことで、持続的な保育の提供に向けた取組を進めてまいります。
 子育て支援の充実は、尼崎市政の一丁目一番地の課題として、引き続き、庁内で総合的な検討を進め、柔軟な対応ができるよう努めます。


(学校教育)

 次に学校教育の充実です。
 学校教育の質の向上は、未来を担う子どもへの「投資」であり、また、市民の皆様が、安心して子どもを育てることができる環境の実現に向けて不可欠な要素です。
 私自身、教育長として在職中にも、学校教育の質の向上に向けて取り組んでまいりましたが、今後は、市長として気持ちを新たに、市民の皆様から信頼される学校教育を提供できるよう全力を尽くしてまいります。
 まずは、GIGAスクール構想において整備した1人1台の学習用端末を有効に活用した授業を実施するとともに、主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善を進めていくため、小学校等に設置している大型提示装置を、タッチパネル操作が可能な電子黒板に更新します。

 中学生を対象に、学習用端末を活用したオンライン英会話を実施し、話す力や聞く力を向上させるとともに、外国語学習への興味・関心の向上に努めます。また、尼崎高等学校の「国際総合類型」において、英語によるグループディスカッションなどの新たな教育プログラムを実施し、グローバル社会で活躍できる資質や能力を醸成します。

 さらに、不登校児童生徒が年々増加している中で、公教育を多様性のあるものにしていくため の仕組みについて、調査研究を進めます。


(インクルーシブ教育・保育等)

 学校教育の質の向上に加え、もう一つの重要な視点はインクルーシブ教育・保育等の充実です。
 共生社会の実現に向けては、障害の種類・程度等に応じた受け入れを可能とする現行制度に加え、本人及び保護者が希望した際に、通常の学校や保育所で余裕をもって対応できる体制が必要であり、その充実に向けた取組を、一歩一歩進めてまいります。

 令和3年9月に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」も踏まえ、公立保育所において医療的ケア児の受け入れが可能となるよう看護師や保育士の配置など、必要な体制を強化します。

 また、小中高等学校において生活介助員を増員し、生活上の困難にかかる支援体制を充実させるとともに、小中学校においては、発達の特性などにより、個別に支援を必要とする児童生徒が増加していることに伴う支援体制を充実させるため、特別支援教育支援員を一校に1人ずつ配置します。

 インクルーシブ教育・保育は、予算による体制面の充実と併せて、保育・教育現場におけるイ ンクルーシブの考え方そのものを見直していくことも重要な視点であることから、研修の充実・工夫も含めた取組を強化します。
 併せて、老朽化が進む「あまよう特別支援学校」のスクールバスについて、児童生徒や保護者の送迎時の負担軽減や安全性向上の観点から、耐用年数を踏まえつつ、順次、ノンステップバスへと切り替えてまいります。

 

2. 誰もが暮らしやすいまち ~生きがい・ささえあい~

 次に、誰もが暮らしやすいまちです。
 一人ひとりの市民に寄り添い、「誰もが暮らしやすいまち」にする観点から、各施策を充実させ、社会的なセーフティネットの機能を果たしてまいります。


(重層的支援)

 まずは、重層的支援の取組の強化です。
 令和4年度より、地域住民の複雑・複合化した支援ニーズに対応するため、重層的支援推進事業として、支援関係者との役割分担等による伴走支援やアウトリーチ、社会参加支援に一体的に取り組んでいるところです。令和5年度は、その中で見えてきた、個別性の高い支援ニーズにより、既存の制度や地域資源を利用することが困難な方への支援を充実させます。


(障害者(児)支援)

 また、障害のある方やその家族が望む地域生活を送ることができるよう、支援体制の充実や連携の強化を図るとともに、グループホーム等の利用者の重度化・高齢化に対応するための施設改修を補助するなど、環境整備を進めます。


(多文化共生)

 多文化共生社会の実現に向けた取組としては、現行の「尼崎市国際化基本方針」を見直し、「(仮称)尼崎市多文化共生社会推進指針」の策定に取り組むとともに、外国籍の方が安心して生活できるよう、外国人総合相談窓口における多言語相談員を拡充し、相談窓口の機能向上を図ります。

 

3. 住環境整備、まちの魅力とイメージの向上 ~魅力 向上・発信~

次に、住環境整備、まちの魅力とイメージの向上です。


(良好な住環境形成)

 ファミリー世帯の定住・転入促進の観点からは、子育て・教育といったソフト戦略に加え、住環境の整備が極めて重要であると考えています。
 尼崎市では、これまでも公有地や民有地における住宅誘導、空家対策などの取組を行ってきましたが、今後、これらの取組をさらに加速させ、パッケージとして打ち出すことを視野に入れ、有識者等から構成される「良好な住環境形成に向けたアドバイザリーボード」を設置し、具体的な取組を集中的に検討します。


(公園等整備)

 次に、駅周辺の特色あるまちづくりとして、阪神タイガースファーム施設を含めた小田南公園等の再整備や、阪神尼崎駅前空間の整備を進めます。なお、整備に当たっては、周辺環境へ配慮し、丁寧な説明を心がけながら、地域の賑わいづくりや魅力向上に取り組みます。
 また、(仮称)武庫川周辺阪急新駅については、利便性の向上はもちろん、周辺のより良い地域社会の形成と持続的発展等に向け、駅設置やその周辺整備について検討してまいります。令和5年度には、市民アンケートの結果を踏まえた勉強会を開催するなど、地域の方や関係者との意見交換も進めます。


(ルール・マナー)

 本市の課題である「ファミリー世帯の転出超過」の要因の一つである、たばこ・ごみ・自転車マナーなど、住民のマナー改善に向けては、庁内に設置した「尼崎市マナー向上推進チーム」の もと、組織横断的に取組を進めます。
 そのため、まずは喫緊の課題であるたばこ対策の取組として、大阪・関西万博を見据え、路上喫煙禁止区域の拡大や喫煙マナー向上に向けた啓発などの取組を強化します。


(イメージの向上)

 まちのイメージを向上させていくためには、安全の確保が不可欠です。
 尼崎市は、平成27年時点には8か所あった暴力団事務所が、昨年、ゼロになりました。現在、尼崎市は引き続き、神戸市、姫路市と併せて、特定抗争指定暴力団等の警戒区域に指定されており、暴力団事務所の開設・運営は禁止されていますが、この警戒区域の指定は、いずれ解除される可能性があります。
 今後とも、市内に暴力団事務所が存在しない状態を維持するため、会議体を設置し、「尼崎市暴力団排除条例」の見直しも含めた対策の強化について検討・実施することで、暴力団排除活動の更なる推進を図ります。
 旧かんなみ新地につきましても、二度と元に戻さないという覚悟を持って、引き続き土地建物の取得を着実に進めます。
 さらに、市民の安全を守るため、高規格救急自動車等を整備するとともに、消防力の更なる強化を目指して策定する「尼崎市消防署等配置計画」に基づき、東消防署の建替えを進めるなど、消防体制の充実に努めます。
 これらの取組を通じ、本市の魅力を高めるとともに、市民の安全・安心を守り、イメージの向上に努めてまいります。

 

4. 地域経済の活性化と脱炭素社会に向けた取組 ~脱炭素・経済活性~

次に、地域経済の活性化と脱炭素社会に向けた取組です。


(産業政策)

 基礎自治体における産業振興の役割を考えたときに、まず強化すべきは、新規産業創造支援など、尼崎市から、新たな産業イノベーションを誘発するような取組を強化していくことだと考えています。
 これら産業イノベーション創造に向けた取組をはじめ、産業振興・雇用就労支援施策を講じていく観点や、尼崎市内への企業投資活動を促進する観点から、外部専門家会議である「産業政策会議」を設置し、具体的な施策について検討を進めます。


(地域経済活性化)

 また、地域内経済循環ツールとして活用している「あま咲きコイン」については、プレミアムキャンペーンを継続実施するとともに、今後、財源の確保や利便性の向上といった課題に対応する中で、加盟店の拡大などにより持続可能な事業となるよう検討を進めます。


(脱炭素)

 脱炭素社会に向けた取組としては、本市の保有する公用車について順次エコカーに置き換えを進め、2040年までに100%導入することを目指します。なお、令和5年度予算では20台分の予算を計上しております。
 また、事業者と連携して、市が所有する駐車場等を活用し、民間のEVカーシェアの導入を進めるとともに、市民の皆様へ広くPRすることでエコカーへの転換とシェアリングの普及を促進します。

 加えて、原油価格高騰などによるエネルギーコスト問題に直面している市内事業者に対して、簡易な省エネ診断や二酸化炭素排出量を可視化するシステムの導入を促進するとともに、空調や照明などの省エネ設備の導入にかかる費用の一部を補助することで、脱炭素に向けた意識の醸成を図ります。


(新ごみ処理施設)

 また、「尼崎市新ごみ処理施設整備基本計画」に基づき、クリーンセンター第2工場や資源リサイクルセンターなどの建替えを、令和13年度を目標年度として進めます。

 このような取組を通じ、地域経済の活性化と環境問題への対応を両輪で進めてまいります。

 

5. 市民とともに市民に寄り添う市役所 ~行政運営~

 最後に、市民とともに市民に寄り添う市役所になるための取組です。
 昨年11月に提出された「尼崎市USBメモリー紛失事案調査委員会」からの調査報告書を踏まえ、今後、人的、物理的両面からの情報セキュリティ対策の強化など、再発防止策を確実に進めます。併せて利便性の向上、業務の効率化を目指し、更なるデジタル化を推進してまいります。


(情報セキュリティ対策・デジタル化)

 具体的には、情報セキュリティ対策や、効率的・効果的な情報化を推進するためのかじ取り役を担う専門家である「CISO補佐官」兼「CIO補佐官」を外部から任用するとともに、情報セキュリティ担当職員の増員や委託業務管理の徹底などの取組により、情報セキュリティ対策及びデジタル化の推進体制の強化を図ります。

 そして、空家等情報管理システムやAIを活用した母子家庭等の相談支援業務、AI議事録等作成ツールの導入などにより行政サービスの質の向上や業務の効率化を図ります。
 さらに、電子媒体による市報あまがさき概要版の発行、歴史資料の電子化など、より伝わりやすい情報発信に努めます。


(地域振興体制)

 地域振興体制については、令和4年度に立花南生涯学習プラザがリニューアルオープンするなど、各地区の拠点整備が進みました。そして、地域担当職員による地域とのつながりも広がり、 地域の力が発揮されるための基盤が整いつつあります。令和5年度は地域振興にかかる各種支援制度等を、より地域の実態に合った運用ができる仕組みとします。

 また、組織体制に関しましては、所信表明でも申し上げましたとおり、市政の重要事項の意思決定に女性の視点が入るよう、女性幹部職員の登用につきましても、意を用いてまいります。

三 令和5年度予算

 以上、市政運営に向けての基本的な考え方と、令和5年度当初予算に盛り込んだ主な事業について申し上げました。

 この結果、令和5年度当初予算は、

 一般会計 2,099 億1,500 万円
 特別会計 1,017 億8,992 万円
 企業会計  943 億4,971 万円  となっております。

 歳出では社会保障関係費が前年度と比べ増加していますが、歳入では個人市民税や固定資産税、地方消費税交付金などの主要一般財源が増加していること、そして、スクラップ&ビルドや優先順位をつけた投資的事業の実施など、令和5年度から開始となる「財政運営方針」に基づく財政規律、財政運営の目標とルールを踏まえた予算編成により、収支均衡を確保することができました。

 その結果、本市の将来負担の令和5年度末の見込額は 1,024 億円となっており、市債の発行額が償還元金を下回っていることなどにより、着実に減少しています。
 なお、今後も継続して適切な財政運営を図るため、「尼崎市財政運営基本条例」を本定例会に提出しております。

 また、新型コロナウイルス感染症対策に関する事業費につきましては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の位置付けの変更が予定されていることから、今後の公費負担にかかる国の動向などに注視しながら、必要な事業を展開できるよう適宜補正予算で示してまいります。

 

四 むすびに

 最後に、令和5年度は本市の長期的な文化施策の指針である新しい「文化ビジョン」が始まります。また、本市の文化振興の拠点である総合文化センターの耐震化等の改修に向けた取組が進む中、近松門左衛門の300回忌の節目となります。さらに、令和6年度には白髪一雄氏の生誕100年を迎えます。こうした機会を捉え、誰もがより尼崎市に魅力を感じ、愛着を持っていただけるよう各種取組を進めます。

 また、尼崎市には、国又は兵庫県が管理する道路、河川、港湾もあります。特に、フェニックス事業用地の今後の活用方策も含む兵庫県域の大阪湾ベイエリアの活性化などは、尼崎市産業の活性化や市財政への影響も考慮しつつ、関係者が一体となって取り組むことが重要です。
 このような、国、県、関係機関等、多様な主体で取り組む事業につきましても、尼崎市の成長を持続的に進める観点から、アンテナを高く張り、積極的に議論を深めてまいります。


 令和5年度からは、「第6次尼崎市総合計画」に基づく、新たなまちづくりが始まります。
 産業都市としての伝統を大切にしつつ、近年高まりつつある本市の「住むまち」としての評価をさらに高め、誰もが「住みたいまち」、「住んでよかったまち」と感じ、「人が集まるにぎわいのあるまち」となるよう、全力で尼崎市を「次のステージ」に進めてまいります。

 どうぞ、議員の皆様、市民の皆様、引き続き、ご支援とご協力を賜りますよう心からお願い申 し上げます。

 

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