令和7年度 施政方針

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印刷 ページ番号1033609 更新日 2025年2月19日

施政方針演説

 第25回市議会定例会の開会に当たり、令和7年度の市政運営に対する所信を申し上げ、議員の皆様及び市民の皆様のご理解、ご賛同を賜りたいと存じます。

1 はじめに

 昨年12月で、私が市長に就任してから2年が経過し、任期の折り返し地点を迎えました。

 「“あまがさき”を次のステージに」

をキャッチフレーズとして、「実行力」、「対話重視」、「誰一人取り残さない」の3つを政治理念としつつ、与えられた任期の中で、着実に政策を前に進めていくことに専念してまいりました。

 令和5年度は、就任直後の予算編成であり「挑戦」の年でありました。
 6年度は、「子ども子育てアクションプラン」などの各政策プランを策定し、初めて、通年で予算編成を担い、それを「実行・実現」させる年でありました。
 そして、7年度。
 私にとっては、3度目の予算編成になりました。
 これまで実施してきた様々な政策の効果を、市民の皆様に「実感」いただく。
 そのことを強く意識した、次のステージへの「幕開け」の年にしていく。そのような覚悟で臨んでいきたいと思っています。

 今年は、阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えた年です。
 1月17日には、天皇皇后両陛下ご臨席の下、神戸市内で開催された追悼式典に出席いたしました。
 尼崎でも、49名の尊い命が失われたほか、たくさんの住宅が倒壊するなど大きな被害を受けました。

 震災後、復旧・復興にご尽力された市民の皆様、そして職員の姿があったと伺っております。歴史博物館には、当時の記録が保管されており、今、企画展も開催されています。今を生きる我々には、震災の記録を後世に伝え、次の時代に向けて何ができるのか、絶えず向き合い続ける責務があります。

 震災を契機として、社会システムは大きく変わりました。
 災害対策関連の各種法令の制定や改正が行われ、被災者生活再建支援の仕組みやボランティアの受入体制等の充実・強化などが図られました。NPO法人という新しい法人制度も創設されました。
 我々は、困難な中でも、その困難を教訓に、次世代のために様々な知的財産を創造し、継承してきました。

 社会は、我々が震災後の「創造的復興」で経験したように、「改革」と「創造」を繰り返し、進歩していきます。
 歴史に思いを馳せつつ、一方で、前例踏襲に陥ることなく、常に、政策の意義を問い直しながら、未来志向で政策を推進し、「改革」と「創造」を通じた市政の発展を目指してまいります。

 令和6年の社会動態は2,400人の転入超過となりました。57年ぶりの高い数字です。
 3年連続の社会増。過去10年間でも8年が転入超過となっており、全国的に急激な人口減少が進んでいる中にあって、本市は「選ばれる」都市となりつつあります。
 市民意識調査においても、「尼崎市のイメージが良くなった」と回答した市民の割合は6割を超えており、上昇傾向が続いています。
 交通利便性と相まって、駅前の再開発や様々な施策の取組の成果が表れつつあります。
 まちは、継続して若い世代が流入し、そこで子育てなどの生活の営みがなされてこそ、地域の多様性と活気が生まれ、地域福祉の向上が図られます。
 前向きな流れを更に加速させ、選ばれるまちであり続けるために、様々な世代へのきめ細やかな目配りを前提としながら、若い世代が希望を持って尼崎で生活し続けたいと思えるようなまちづくりを進めてまいります。
 昨年度取りまとめた「あまがさき子ども・子育てアクションプラン」、「良好な住環境形成のための住宅施策パッケージ」といった部局横断的な政策プランを継続的にアップデートさせつつ、市民の皆様にとって、「生活する場」としても、「働く場」としても魅力的と思えるまちとなるよう、私が先頭に立ち、各施策を着実に推進してまいります。

2 令和7年度の重点項目

 それでは、令和7年度予算の主な事業について申し上げます。

 令和7年度は、これまで申し上げた、若い世代が希望を持って尼崎で生活し続けたいと思えるようなまちづくりへの取組を基盤に据えつつ、地域共生社会の実現も見据えて、5つの重点項目を掲げ、予算編成に取り組みました。

(1)  子ども・子育てに係る支援と環境の充実

 1つ目は、子ども・子育てに係る支援と環境の充実です。

 共働き世帯が増えている中で、尼崎の立地の良さは更なる「強み」となりつつあります。
 真に「働く」も「子育て」も応援するまちへと発展させていくために、引き続き、子育て世帯の「経済的負担」、「時間的負担」、「心理的負担」の軽減につながる取組を中心とした、子育て支援策の更なる強化を進めます。

 まずは、公約でも掲げている、子ども医療費の更なる負担軽減です。
 通院医療費の就学前までの自己負担をなくし、中学3年生までは世帯所得に応じた助成を行うなど、これまでも段階的に拡充を図ってきましたが、7月からは助成対象を18歳まで拡充します。
 あわせて、就学後から中学3年生までの自己負担額も一部減額し、全体として関西圏の大都市である大阪市や神戸市よりも低い負担水準にします。

 次に、安心して子どもを産み・育てられるようにするための妊婦健診と産後ケア事業の充実です。
 妊婦健診の費用助成については、母体と胎児の健康管理のために実施する超音波検査の助成回数を拡充し、当該検査費用の全額公費負担を実現します。
 産後ケア事業については、利用できる事業所及び利用対象者を大幅に拡大するとともに、「宿泊型」、「通所型」、「訪問型」の各サービスの利用料を見直し、より利用しやすい環境を整えます。

 病児・病後児保育サービスについては、既存の「施設型」に加えて、新たに「訪問型」のサービスを導入することを通じて、保護者の働きやすい環境づくりを支援します。
 「施設型」の病児・病後児保育サービスについても、引き続き担い手確保に向けた取組を進めてまいります。

 長年の課題であった保育所の待機児童も、認可保育所の新設、定員の弾力運用、AIの活用による事務の効率化と入所調整期間の確保などの取組により、徐々に解消されつつあります。引き続き、保育士の確保・定着化に取り組むなど、早期の待機児童ゼロの実現を目指してまいります。
 また、今年度、開所時間を19時まで延長した児童ホームについては、さらに、働く若い子育て世帯を支援する観点から、長期休業期間中の昼食配送サービスの導入を進めてまいります。

 学校教育の充実に向けた取組も着実に進めます。
 令和6年度の全国学力・学習状況調査においては、小学6年生の算数は全国平均を上回り、また、中学3年生の数学は昨年度から3ポイント上昇し、全国平均に達しました。
 課題が残る読解力の向上に向けた取組強化など、児童生徒の基礎学力の向上に向けた取組を粘り強く実施しつつ、個人が、それぞれに持つ能力を最大限発揮できるようにするための、個に寄り添った教育を推進してまいります。

 「学びの多様化学校」については、「特別の教育課程を編成して教育を実施することができる」という国の特例制度を活用し、兵庫県下の公立で初めてとなる「学校型」として、令和8年4月の開校を目指しています。
 現在、国においても、次の学習指導要領の改訂に向けた議論が行われています。
 新たに設置する「学びの多様化学校」は、これからの市内の学校・学級運営の在り方や、新しい教育方法及び評価の在り方を考える際に参照される「フラッグシップ校」となることを視野に入れ、既存の概念にとらわれない発想を持ちながら準備を進めてまいります。

 あまよう特別支援学校における医療的ケアの体制も充実させます。
 これまで保護者の付添いを必要としていた人工呼吸器を使用している児童生徒に対して、看護師の配置体制を更に充実させ、付添いを必要としない環境を整えることで、保護者の負担軽減を図ります。

 学校の施設設備についても、着実に改善を進めてまいります。
 トイレの洋式化、インクルーシブ教育に係る基礎的環境整備としてのエレベーターの設置促進に加え、新たに、学校体育館への空調設備の設置も進めてまいります。
 子どもたちの夏季の学習環境の改善に加え、災害時における避難所環境の改善にもつなげてまいります。
 また、子どもの数が急増している上坂部・園田南小学校の児童ホームの定員拡大を図るとともに、園田南小学校の更なる教室数の確保に向けた取組も早急に進めてまいります。

 「あまがさき子ども・子育てアクションプラン」では、令和6年度から8年度までの3か年で、40項目の施策を実施することとしています。
 全ての項目達成に向けて、これからも庁内で議論を重ねるとともに、今年度、新たに設置した「尼崎市子育て政策懇話会」において外部専門家の意見も伺いながら、子育て支援策の更なる充実につなげてまいります。

(2)  良好な住環境形成とエリアブランディングの推進

 次に、良好な住環境形成とエリアブランディングの推進です。

 子ども・子育てに係る支援と環境の充実に加え、「住む」場所としての魅力を高めてまいります。
 早くから発展してきた本市は、空き家等に代表されるいわゆる「都市のスポンジ化」が進行しており、そのことが住宅供給の制約を生み、新規居住希望者の選択肢を狭めています。
 高い利便性の魅力を最大限生かすためにも、住宅供給の新陳代謝を進め、供給制約を可能な限り解消する努力をしてまいります。

 まずは、「住宅施策パッケージ」の一つ目の柱である「民間住宅の誘導」です。
 今年度は、兵庫県と連携した県外からの民間賃貸住宅への住み替え支援や戸建て住宅の取得支援に係る補助を活用し、100世帯を超える子育て世帯が本市に転入し、子育て支援施設の開設にもつながりました。
 7年度は、これら支援事業を軌道に乗せるとともに、転入世帯へのアンケート調査などを通じて、より効果的な施策展開へとつなげてまいります。

 二つ目の柱は「公共用地の有効活用」です。
 富松住宅跡地などの公共用地は、市内でも数少ないまとまった開発用地です。良好な住環境が形成されるよう、売却条件について詳細に検討し、手続を進めてまいります。
 あわせて、市営住宅の空き室を有効活用し、これから尼崎で頑張って生活しようとしている子育て世帯や若年世帯を応援してまいります。

 三つ目の柱は「空き家対策の推進」です。
 不動産登記法の改正により、令和6年4月から一定期間内の相続登記が義務化されました。この法改正の趣旨を実効あるものとするため、これまで取り組んできた、長年の放置により老朽化し危険になった空き家の除却とセットで、新たに、初期段階の空き家所有者へのアプローチを行い、空き家の新陳代謝を促進する取組を抜本的に強化します。そのために、専門家である司法書士会と協力し、相続登記が未了の空き家の所有者調査から相続登記までを一体とした伴走型支援を行います。
 あわせて、老朽化し、適切に管理されていない木造賃貸住宅の除却支援を通じて、建替えを促進し、居住者の安全確保と住宅ストックの質の向上を目指します。

 なお、現在、「住環境アドバイザリーボード」において、良質な民間住宅の開発誘導に向けた検討も進めています。敷地面積や床面積、景観、住宅性能といった配慮基準など、子育て世帯にとって望ましい住宅が供給されるような住宅開発の誘導策についての検討も進め、実効性のある施策にしてまいります。

 最後に、交通政策です。
 担い手不足等によりバス路線の減便が続いており、新たな交通政策を検討する時期に来ています。高齢者が気軽に外出できる環境を保障することは、社会参加やフレイル予防につながることからも重視すべき観点です。
 7年度は、園田地域を中心に、路線バスを補完する新たな交通サービスとなり得るAIオンデマンド型交通の実証運行を実施し、その成果や課題を検証してまいります。

(3)  時代の変化に対応した産業イノベーションの推進

 次に、時代の変化に対応した産業イノベーションの推進です。

 産業政策にあらゆる分野がある中で、基礎自治体として強みを発揮できる分野は、「新規創業・事業承継支援」、「企業立地促進」、そして「地域消費の促進」の3つであると考えています。

 まずは、「新規創業・事業承継支援」です。
 時代の変化が早まり、転職も当たり前の時代になっています。価値観の多様化が進み、働き手にとっても「いかに自分が成長できるか」が重要な視点になってきています。

 「挑戦するなら、あまがさき」

 若い世代が、尼崎で夢を持って挑戦することを思い切り応援するビジネス環境を作ってまいります。
 今年度設置した「オープンイノベーションコア(OIC)尼崎」において、イノベーション創出に果敢にチャレンジする企業やスタートアップ企業等のきめ細やかな支援に取り組んでまいります。
 OIC尼崎以外にも、本市にはものづくり支援センターやエーリックなどの支援機関が集積しています。
 「オール尼崎」の体制で企業支援を行うことで、近畿圏随一の産業都市として、企業が力を発揮できる環境づくりを進めてまいります。

 次に、「企業立地促進」です。
 新たな雇用や付加価値の高い企業を積極的に誘致することは、本市の成長に直結します。
 尼崎の最後のフロンティアと言われているフェニックス事業用地の分譲も、今後予定されています。
 昨年末には「尼崎市企業立地方針」を策定し、1.化学産業を中心とした成長関連産業、2.大学発ベンチャー等のスタートアップ企業、3.本社・研究所の機能を有した企業の積極誘致を、重点分野とすることを明確にしました。
 7年度は、この重点分野の企業立地を促進する観点から、固定資産税・都市計画税の額に応じて奨励措置を受けられるようにするための「企業投資活動促進制度」を拡充します。

 最後に、「地域消費の促進」です。
 物価高騰の影響を軽減する国の補正予算等も有効活用し、「あま咲きコイン」のプレミアムキャンペーンを、時宜を得ながら実施することにより、約50億円分のポイントを市内で流通させ、物価高騰に直面する消費者支援や地域内経済循環の促進につなげてまいります。

 いよいよ、4月から、大阪・関西万博が開催されます。
 万博に合わせて市内に設置される専用駐車場の隣接地では、「ひょうご楽市楽座」が開催されます。
 兵庫五国の魅力を発信する県産品マルシェや県内各地のプレイヤーによるステージ出演なども予定されています。
 本市も万博開催に向けて、商店街の食べ歩きツアー等のコンテンツ確立、飲食店等へのインバウンド対応支援などの準備を進めてきました。万博を契機に、より一層、にぎわいのあふれるまちへとつなげてまいります。

 これらの取組に加え、地域企業の働き方改革に向けた機運醸成も進めてまいります。
 働き方改革については、経済政策や労働政策だけでなく、子育てや生活の豊かさとも直結する側面があり、社会全体で進めていかなければなりません。
 近年、家庭と仕事の両立に向け、家庭への支援等を積極的に行う企業も増えてきています。
 「子育て応援企業表彰」を新たに創設することにより、官民が一体となって、多様な働き方の実現を推し進め、子育て世帯を応援する機運を高めてまいります。

(4)  多文化共生社会の実現に向けた取組

 次に、多文化共生社会の実現に向けた取組です。

 「誰一人取り残さない」

 一人ひとりの住民が生きがいを持って暮らせるよう、複雑化・複合化した課題を抱える方々への重層的な支援などを進めてきました。
 7年度は、様々な生きづらさを抱えた方が地域社会で活躍する機会を創出するため、新たに、コミュニティファームを使った居場所づくりなどの取組を進めます。
 あわせて、介護が必要となる前の段階から運動を意識し、自発的に介護予防に取り組めるプログラムを推進するとともに、高齢者生きがい就労を市内に広げ、高齢者の「生きがい創出」や「社会参加の促進」も進めてまいります。

 今、日本は、かつてないほど、外国人の人口割合が高まっています。
 労働者不足が深刻な中、令和元年度に在留資格「特定技能」が創設されたほか、令和6年6月には「技能実習制度」が「育成就労制度」へ見直される法改正が国会で可決・成立するなど、外国人材確保に向けた国レベルでの取組が加速しています。あわせて、多文化共生社会の実現に向けた取組もセットで強化されています。
 本市の人口動態においても、社会増のうち約半分は、いわゆるニューカマーと言われる東南アジア等の出身者が占めます。
 これからの日本社会は、今まで以上に多様な価値観を受け入れ、共生していくことが求められる時代に突入しています。
 こうした状況を踏まえ、多様な文化的背景を持つ者同士が、お互いの価値を認め合い、地域で共生できるような社会を目指す観点から、昨年11月に「あまがさき多文化共生施策アクションプラン」を策定しました。
 7年度は、同プランに掲げる「学び・育む環境の整備」、「暮らしやすい環境の整備」、「働きやすい環境の整備」の3つの柱に沿った事業を実施してまいります。

 まず、多文化共生支援員を増員するとともに、小・中学校に通訳機器を導入し、外国人児童生徒の学習や学校生活に必要な日本語の定着、円滑なコミュニケーションによる児童生徒の心の安定に向けた取組を進めます。

 次に、市公式ホームページへの「やさしい日本語変換機能」の導入や、生涯学習プラザにおける外国人との交流イベントの開催など、外国人の居場所づくりの充実を図ります。

 最後に、中小企業による外国人材の育成をサポートするために外国人材雇用促進支援補助金を拡充するほか、外国人留学生向け合同企業説明会を新たに実施するなど、働きやすい環境を整備してまいります。

 地域共生社会の実現に向けては、今後の情勢をマクロの視点で把握することとあわせて、今、まさに顕在化している課題に対して迅速に対応するミクロの視点も重要です。
 様々な方との対話を通じて、一人ひとりに寄り添った取組を展開してまいります。

(5)  市民サービスの向上と業務効率化に向けた共創DXの推進

 次に、市民サービスの向上と業務効率化に向けた共創DXの推進です。

 昨年度策定した「あまがさき共創DXプラン」に基づき、市政アンケートの一元化、オンライン申請の拡充による行政手続のスマート化、デジタルツールを活用した業務効率化、DX人材の育成等に取り組んできました。
 例えば、窓口手続のオンライン化については、消防局における建築物の確認手続のオンライン化など、プラン策定時の68手続から164手続へと増加し、95%の満足度もいただいています。
 市役所の業務においても、1万時間を超える業務改善効果を実現し、例えば給付金申請における審査状況のWEBでの見える化のほか、ペーパレスの取組も進めています。

 7年度は、企画立案業務等に活用できる生成AI、紙資料のデータ化業務に必要なAI-OCR、市の保有するデータの分析・見える化のためのBIツールの導入を進めるとともに、職員研修の充実を図り、業務改善の取組を更に進めてまいります。
 また、子ども支援に当たる職員が各家庭等に訪問する際に活用するためのタブレットを新たに配備し、支援に必要な情報を即座に共有可能とする仕組みを構築します。これにより、虐待の未然防止や重症化防止の取組を強化します。
 あわせて、学校手続や事業者と本市の間の請求事務のデジタル化などに向けた検討の具体化を進めてまいります。

 情報セキュリティ対策の更なる強化も進めます。
 個人情報に関するセキュリティインシデントの多くが、外部からのウイルス等によるサイバー攻撃ではなく、内部の職員による人的ミス、とりわけ個人情報や個人データが記載された書類の紛失等に起因しています。
 人的ミスのリスクを軽減する観点から、ファイル保存時の自動暗号化システムの導入を進めるとともに、職員が通常の資料作成等で利用するインターネット接続系から個人情報を取り扱うネットワークシステムであるLGWAN接続系に仮想的に接続できる仕組みの構築などを通じ、個人情報・個人データの紙での打ち出しや書類での保管を極力減らしていく取組を進めてまいります。

 今後、国の方針に基づく、基幹系業務システムのガバメントクラウドへの移行と標準化が予定されています。これら取組を着実に進めるとともに、庁内業務の更なるDX推進とセキュリティ確保の観点から、庁内ネットワークの抜本的な見直しについても検討を進めてまいります。

(6)  次のステージに向けた様々な取組

 これまで申し上げた重点的に取り組んでいく項目のほかにも、このまちの魅力を更に高め、「“あまがさき”を次のステージに」進めていくために、様々な施策に取り組んでまいります。

 年々増加している救急需要に迅速・的確に対応するため、日勤の救急隊を1隊増隊し、救急サービスの維持向上を図ります。
 「あまやさい」については、地産地消推進店のPR強化に加え、農業者の販路拡大を支援するなど認知度向上・消費拡大に向けた取組を強化します。
 さらに、学校給食におけるオーガニック食材の使用にも取り組んでまいります。

 令和8年は、市制110周年を迎える年です。市制100周年の際に蒔いた様々な取組の種が、その後の10年間でどのように芽を出し、花開いたかを振り返るとともに、尼崎の未来を考えるきっかけとなる場づくりにも取り組んでいきたいと考えています。
 令和7年度はコンセプトづくりやロゴマークプロジェクトなどの実施を予定しており、来たる市制110周年に向けて、市民・事業者も巻き込みながらしっかりと準備を進めてまいります。

 最後に、まちの魅力を高めるための投資的事業です。
 駅前や公園、図書館などは、多くの市民が利用する公共的な空間・施設です。
 こうした空間・施設は、そのエリアに独立して存在するのではなく、エリア全体への価値や意味付けにおいて大きな「外部効果」を有します。
 公共的な空間・施設の存在が、市民のまちへの意識に大きな影響を与えることを強く意識しながら、デザイン性も含めて整備・メンテナンスを進めていくことが重要と考えています。

 いよいよ、本年3月に、小田南公園の再整備が完了し、ゼロカーボンベースボールパークがオープンします。
 開業後には公式戦と連携したイベントの実施、商店街や観光施設を周遊する仕組みづくりなどを進めてまいります。
 こうした取組を通じて、交流人口の増加や周辺地域の活性化を図るとともに、来場者の環境意識の向上と行動変容を促し、地域活性化と脱炭素の両立を目指します。

 同時期には、阪神尼崎駅前の中央公園もリニューアルオープンします。
 駅前は尼崎のいわゆる玄関口であり、多くの人が行き交います。駅前の公園が素通りされるのではなく、公園を目当てに来てもらえるよう様々な仕掛けづくりに取り組みます。

 ゼロカーボンベースボールパークと中央公園の間にある尼崎城では、強みである体験コンテンツを拡充していきます。
 大物駅周辺では、今後、大物公園の芝生広場や遊具等の新設、大物川緑地などの一体整備も予定しています。
 旧かんなみ新地の跡地活用についても、地域の皆様のご理解を得ながら検討してまいります。
 こうした取組を通じて、南部エリアにおける新たなにぎわいの創出と活性化につなげていきます。

 北部エリアでは、阪急塚口駅・園田駅の居心地よく歩きたくなる空間や地域の活性化を目指した駅前のハード整備に引き続き取り組みます。
 また、駅前広場を市民や事業者の日常的な暮らしの場として活用していただき、にぎわいを創出する「はんつかパブリックハック宣言」などのソフト面の取組も併せて進めていきます。
 (仮称)武庫川周辺阪急新駅の整備に向けた取組や大井戸公園内での新図書館等の整備、さらに農業公園の再整備などについても、各エリアの価値向上を強く意識しながら、着実に準備を進めてまいります。

 本年11月には休日夜間急病診療所の移転・開設を予定しています。また、令和8年4月には、これまで長きにわたって準備をしてきた児童相談所も、いよいよ開設となります。

 「画竜点睛を欠く」という言葉があります。

 ハードを運用するのは「人」です。
 どのような立派な施設も、管理者が愛情を持って管理しなければ、すぐに魅力を失い、老朽化します。
 関係する職員挙げて、施設の効能を最大化するための運用に智慧を出してまいります。

3 令和7年度予算

 以上、市政運営に向けての基本的な考え方と、令和7年度当初予算に盛り込んだ主要事業等について申し上げました。
 この結果、令和7年度当初予算は、
 一般会計 2,424億7,000万円
 特別会計 1,034億8,794万7千円
 企業会計  963億9,757万7千円
となっています。

 財政規律、財政運営の目標とルールを踏まえた予算を編成し、公債費に起因する収支不足に対応するために減債基金を取り崩すことで、実質的な収支均衡予算を確保いたしました。また、本市の財政運営において、長きにわたって課題となっていた将来負担についても、これまでの教訓を踏まえ、適切に管理しているところです。

 今後も、税源の涵養などによる歳入確保に努めるとともに、市債の早期償還や基金の活用により財源を確保し、規律ある財政運営と、魅力あるまちづくりに向けた投資の両立を図ります。

 あわせて、昨今の経済状況や本市の財政状況が好転していることも踏まえ、より柔軟かつ効果的な財政運営を目指してまいります。

4 むすびに

 2015年に亡くなったベネディクト・アンダーソンという政治学者が、「想像の共同体」という書籍を残しています。
 会ったこともない同胞が、一つの「国民意識」を持つ、いわゆる「ナショナリズム」の起源について、言語や宗教、出版物の発展などから分析した書籍です。

 私は、学生時代にこの書籍の存在を知ってから、この「想像の共同体」という言葉を意識しながら、自分なりの行政への向き合い方を考えてまいりました。

 ナショナリズムは、強い結束力を作る一方で、一人ひとりの事情を捨象してしまうという意味で、暴力的でもあります。

 民主主義においては、市民と政治・行政との間に情報の非対称性が生じていることを前提として、そこを新聞等のメディアが翻訳・補完するという関係が成り立っています。
 SNSの普及により、様々な「市民」の感情や思いが、直接的に表現される昨今の状況において、その関係性が大きく変わりつつあり、分断と極端性が顕在化しつつあることを実感しています。

 マクロな目で見たときに見える地域の経済社会情勢と、ミクロな目で見たときに見える一人ひとりが置かれた生活状況や感情は異なります。
 私自身、改めて、この点を心にとどめ、職務に向き合わないといけないと考えています。

 幸い、私たち人間には、本来、「共感」するという能力があります。

 常に謙虚に、そして、市民の皆様だけでなく、職員も含めて、それぞれが置かれている様々な立場について「想像」し、「共感」する努力を怠らず、その上で、心の通った温かい政策を実現し、それを説明できるよう、今後とも、全力で職務に邁進してまいります。

 どうぞ、議員の皆様、市民の皆様、引き続きのご支援とご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、私の施政方針演説とさせていただきます。

このページに関するお問い合わせ

秘書室 政策秘書担当
〒660-8501 兵庫県尼崎市東七松町1丁目23番1号 本庁南館2階
電話番号:06-6489-6474
ファクス番号:06-6489-6009