近松作品紹介

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印刷 ページ番号1005768 更新日 2022年10月27日

近松作品の特色

   近松の作品は、流麗で音楽的な文章の中に、現実の醜さや悲しさ、葛藤、不条理といったものが込められているのが特色です。義理と人情の狭間で翻弄される人々や、現世に絶望し、来世にかけた男女の純愛を力強く描き出しています。 さらに、世話物という当時の上方で実際に起きた心中事件などを題材とした、いわゆる当時の「現代演劇」といわれる新しい演劇分野を創り出し、大衆の心をとらえました。 そして、義太夫や役者が主役であった浄瑠璃、歌舞伎の世界で浄瑠璃本に作者の名を署名するなど、演劇界に新しい風を吹き込んだ功績は大きいと言えます。
   近松は、およそ50年間で浄瑠璃や歌舞伎の脚本を約150編書きました。 その作品は、歴史上の物語から題材をとったもの(時代物 約90編)、実際に市井に起こった心中事件などをもとにしたもの(世話物 約24編)、その他、歌舞伎狂言(約40編)などがあり変化に富んでいます。

代表的な作品

  •  世継曽我(よつぎそが)  時代物  1683年初演

    曽我兄弟は父親の敵工藤祐経(くどうすけつね)を討つ。兄十郎は討死し、弟五郎は新開荒四郎と荒井藤太に鳥獣扱いされたのち死罪となった。このことを知った曽我の縁者(えんじゃ)朝比奈三郎は激怒。両者こそが主君の敵討とみなし、曽我の家の郎党鬼王、団三郎の兄弟に主君の敵であるから討ち取れとすすめる。鬼王、団三郎さらに十郎五郎の愛人虎少将らは、朝比奈三郎の援助のもと曽我兄弟の敵荒四郎と藤太を討つ。十郎の遺児祐若(すけわか)は、源頼朝から曽我の本領を与えられ曽我の家を再興する。

  •  出世景清(しゅっせかげきよ) 時代物 1685年初演

 妻小野姫の父熱田大宮司の館に隠れていた悪七兵衛景清は、大仏殿再興の工事現場で畠山重忠を狙うが、失敗して京都清水坂の先妻阿古屋(あこや)を訪ね、観音参詣をする。留守中、訴人しようとする兄十蔵に、小野姫からの文を見た阿古屋は嫉妬故に同意する。拷問にあう大宮司と小野姫を救うため、景清は自ら縄にかかる。牢にいる景清に詫びに来た阿古屋は、二人の子どもとともに自害する。景清は、牢を破り十蔵を殺し、再び牢に、自ら入る。景清に獄門を命じた頼朝は、手手観音が景清の身代わりになる霊験に驚き赦免の上、日向に領地を与える。景清は自ら目をえぐり日向へ向かう。

  •     けいせい反魂香(けいせいはんごんこう)  時代物  1708年初演

    狩野元信は名古屋山三の推挙で、六角頼賢(ろっかくよりかた)に仕える。元信は不破道犬・伴左衛門親子らにより縛られるが、肩先の血で描いた虎が抜け出て悪人を追い散らす。土佐光信のもとに頼賢の娘銀杏の危機が知らされ、手水鉢に描いた自画像が裏側に抜ける奇跡を起こした又平が、土佐光起の名を許されて銀杏を救出しかくまう。伴左衛門殺しの疑いをかけられた名古屋山三を光起の娘で島原の遣手となっている宮がかばう。銀杏の計らいで七日だけ宮は山三と添うことになる。その宮が実は霊魂であることを知った元信は襖に熊野の絵を描き二人で熊野を巡る。山三を襲った敵はやりこめられ、道犬は捕らえられる。光信は勅勘を許され、元信は絵所をひらくことになり、元信と銀杏は祝言をあげる。

  •   国性爺合戦(こくせんやかっせん) 時代物 1715年初演

  中国の大明国が韃靼国(だったんこく)に攻められ皇帝が殺される。明国の父と日本人の母との間に生まれた「和藤内」(わとうない)、のちの鄭成功(ていせいこう)が、明国で大活躍する物語。祖国の危機を知って、両親とともに大陸に渡る。千里ガ竹で虎退治した和藤内は、異母姉錦祥女(きんしょうじょ)の夫甘輝将軍を味方にしようと獅子ガ城に出向き、母と姉の犠牲的な行為によって甘輝の力を得ることに成功する。戦を勝利に導き、逆臣の李蹈天(りとうてん)を討つ。功績をみとめられ皇帝から朱という国性を贈られ「国性爺」と呼ばれる。

  •  日本振袖始(にほんふりそではじめ) 時代物 1718年初演

  素戔鳴尊は瓊々杵尊(ににぎのみこと)の后に決まった木花開耶姫にかねてから恋しており、彼女を奪おうとするが、姫の姉岩永姫に化けていた三熊野(みくまの)の大人(うし)に十握(とつか)の宝剣を奪われる。殯山(もがりやま)の悪鬼を退治した素戔鳴尊は、今は山岐大蛇(やまたのおろち)の持つ宝剣を取り返すべく出雲に向かう。途中吉備の国で蘇民将来(そたみしょうらい)に親の仇である兄巨旦将来(こたんしょうらい)を討たせる。素戔鳴尊は手摩乳(たらちね)長者の子の稲田姫と恋仲になるが、姫は山岐大蛇の人身御供にたつことになる。素戔鳴尊は八つの壷に毒酒を入れて大蛇に飲ませ、稲田姫と協力して大蛇を退治し、宝剣を取り戻す。

  • 平家女護島(へいけにょごがしま) 時代物 1719年初演

  南都焼き討ちの戦利品として俊寛の妻あずまやは、清盛の側仕えを強要され自害する。あずまやを救おうとした有王丸は鬼界が島へと向かう。鬼界が島の流人は恩赦を受けるが、妻の死を知った俊寛だけは、成経の妻千鳥を乗船させ一人島に残る。都では朱雀御所付近で男達が消えるので宗清が探ると、常磐御前が男達に源氏再興の連判状を見せ、承知しないものを殺しているので意見をし、牛若丸に白旗を与える。有王丸と出合った千鳥は清盛の手から法王を救うが、清盛によって殺される。千鳥・あずまやの怨霊は六波羅の清盛を苦しめとり殺す。東へ急ぐ文覚の夢に平家の滅亡と源氏の再興が予告される。

  • 雙生隅田川(ふたごすみだがわ) 時代物 1720年初演

  吉田少将行房には妾班女との間に梅若・松若という双生の兄弟がいる。舅の奸計で行房は殺され、松若は天狗にさらわれ、梅若は出奔し行方不明になる。武蔵国(現:東京)の隅田川の当たりで暮らす吉田家旧臣の惣太は1人の子どもを折檻して殺してしまう。その子が主君の若君梅若と知った惣太は自害し天狗となる。班女御前が隅田川に至り、梅若の最後を知って悲嘆に暮れているところへ惣太の化身した天狗が松若をつれて現れ、班女御前と惣太の妻から糸は天狗の助勢を受け舅を討ち、松若が家督を継ぐ。

  • 信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん) 時代物 1721年初演

  輝虎を信玄との戦に勝たせるため、敵陣の山本勘介を味方に引き入れようと直江山城守は妻唐衣とともに、勘介の妻お勝と母越路を呼び寄せ、にせの手紙で勘介を誘き出した。唐衣とお勝の刃の中に飛び込み、勘介を国へ返すよう言い息絶えた越路を追善して、輝虎は謙信と、勘介は道鬼と名を改め出家する。

  • 津国女夫池(つのくにめおといけ) 時代物 1724年初演

  将軍足利義輝は謀反を起こした三好長慶に討たれる。家臣造酒之進と腰元清滝は父文治兵衛のもとへ来る。父から二人が兄妹夫婦であると言われ死のうとする。二人の様子から、父は友を殺して妻子を引き取ったこと、二人が実の兄妹でないことを告げた後、妻とともに入水する。義輝の弟は還俗した後、長慶を討つ。

  • 関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま) 時代物 1724年初演

  平将門の遺児良門は、亡父の遺志を受け継いで天下をとろうと企て、妹小蝶を源頼光・頼信・頼平兄弟の屋敷へ侍女として送り込みで、頼平を良門一味に引き入れたが、乳母の子の忠死により兄と和解する。頼光は四天王と葛城山の良門を攻め、小蝶に乗り移っていた土蜘蛛の悪霊を退治する。

  • 冥途の飛脚(めいどのひきゃく) 世話物 1711年初演 

  越後屋の遊女梅川(うめがわ)に通い詰める飛脚屋の養子忠兵衛(ちゅうべえ)。友人八右衛門が金を貸している忠兵衛の行く末を案じ、店に寄せ付けないように頼む。外で立ち聞いて友人が悪口を言っていると思い違いし、忠兵衛は武家屋敷へ届ける懐の公金の封印を切って、その金で梅川を身請けして二人で落ちのびる。男の意地や親子の愛情が見事に描かれている。

  • 曽根崎心中(そねざきしんじゅう) 世話物 1703年初演

     醤油屋の手代徳兵衛(とくべえ)と天満屋の遊女お初は将来を誓った仲。徳兵衛は、主人からすすめられた縁談を断り、そのため養母が受け取った結納金を返そうとするが、友人にだまし取られ、逆に偽判の汚名を着せられる。徳兵衛はその恥辱を濯ぐため、深く言い交わしたお初(はつ)と「あの世で一緒になろう」と死ぬことをともに決意し、示しあわせ天満屋を抜け出し最後の場所曽根崎の森へ向う。

  • 堀川波鼓(ほりかわなみのつづみ) 世話物 1707年初演

  お種は、夫彦九郎(ひこくろう)を愛し江戸に単身赴任中も身辺つつましく暮らしていた。夫の同僚が横恋慕して忍んでくる。養子(お種の弟)の鼓の師匠に見られ、口止めにと酒を飲み交わすうちに、夫のいない寂しさから理性を失い過ちを犯す。彦九郎が帰ってくるときには、すでに身重の体。噂は広がりお種は彦九郎の前で自害する。夫は鼓の師匠の住む京都で彼を斬り、女敵討を果たす。

  • 丹波与作待夜の小室節(たんばのよさくまつよのこむろぶし) 世話物 1707年初演

  丹波の国の城主の調姫(しらべひめ)の乳母しげの井は、江戸への輿入れを嫌がる調姫の機嫌をなおそうと、行列のおともの馬子の三吉(さんきち)と機嫌を直すために道中双六(どうちゅうすごろく)を遊ばせた。三吉が離別した我が子であると知ったしげの井は、輿入れを傷つけられぬと苦哀のなか三吉を帰す。

  • 五十年忌歌念仏(ごじゅうねんきうたねんぶつ) 世話物 1707年初演

  但馬屋の手代清十郎は、蚊屋の中で契る所を見つけられ、お夏の嫁入道具の邪魔をした件と紛失した金七十両の盗みの罪をきせられて但馬屋をおわれた。清十郎はこの悪計を図った勘十郎と誤って源十郎を殺害してしまう。刑場に至った清十郎は、お夏の吸い付けた煙管(きせる)で喉を突いて自害し、やがて、お夏は尼となって清十郎の菩提を弔う。

  • 心中万年草(しんじゅうまんねんそう) 世話物 1710年初演

  寺小姓成田久米之介は商家のお梅と許しあう仲。しかし、親の言い付けでお梅は京の商人と仮祝言を交わす。お梅は久米之介と別れる気にはなれず、直ぐ様下山して一緒に駆落しようという。女人禁制の高野山の中腹にある女人堂までやってきた。そこで父の遺骨を持って高野山に納めに来た姉を見つける。久米之介は名乗らず「小姓は死んだと聞いている」と告げ見送った後にお梅を刺し、自分ものどをつき、お梅の体に折重なって倒れる。

  • 鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら) 世話物 1717年初演

  若殿のご祝言で茶の湯の極意の伝授者が御用を行う。武芸に秀でた権三は、茶の湯の師匠浅香市之進が江戸詰めで不在のため、妻おさゐに伝授の巻物を見せてほしいとお願いする。おさゐは長女お菊の婿になれば伝授するという。権三には言い交わした仲のお雪がいながら立身出世のため承諾する。約束どおり夜更けに権三が訪ねると、おさゐは部屋に通し秘伝の巻物を見せる。権三がお雪の「家の紋」入りの帯を締めているのを見つけ、嫉妬のあまり庭へ投げ捨てる。庭に忍び込んでいた友人に、その帯を証拠に不義を言い立てられ、二人は予期せぬ汚名を着せられ、やむなく落ちていく。

  • 山崎與次兵衛壽の門松(やまざきよじべえねびきのかどまつ) 世話物 1718年初演

  與次兵衛(よじべえ)は、太夫吾妻(あづま)と深い仲になる。ある時与平(よへい)が與次兵衛と間違えられて彦助(ひこすけ)に襲われるが、逆に彦助を傷つけてしまう。男の一分から与平の罪を與次兵衛が引き受け父に監禁される。與次兵衛の妻おきくは吾妻の一途な心を知り二人を相合駕籠で帰し、最後に与平が吾妻を身請けし與次兵衛に添わせる男だてを主題にしている。

  • 博多小女郎波枕(はかたこじょろうなみまくら) 世話浄瑠璃 1718年初演

  惣七(そうひち)は、門司の沖で海賊船に合い海へ投げ込まれたが、奇跡的に助かり、博多で馴染みの遊女小女郎(こじょろう)と会う。ここで偶然にも海賊と再会するが、首領の毛剃九右衛門(けぞえくうえもん)は小女郎を身請けして惣七に与え配下にしようする。惣七は罪よりも恋を選び海賊の一味になり暮らすが、遂には捕まってしまい自殺してしまう。

  • 心中天網島(しんじゅうてんのあみじま) 世話物 1720年初演

  家を守ろうとする妻おさん、家を捨てても遊女小春(こはる)との愛に生きようとする夫の治兵衛(じへえ)。わざと愛想尽くしをして治兵衛と別れようとする小春。夫と小春が別れたと聞いたおさんは、「夫と別れてくれるよう」頼んだ手紙がもとで「女の義理」で小春が治兵衛と別れて死ぬ覚悟をしていることに気付き、小春を身請けさせるために治兵衛を送り出す。

  • 女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく) 世話物 1721年初演

  油屋の与兵衛(よへい)は、遊びと喧嘩好きのどら息子。義父は、もとこの油屋の番頭であったため何かと遠慮している。両親から遊びの金を騙し取ろうとして失敗し、義父と病気の妹を打つのを見て実母は与兵衛を勘当する。借金を返す当てがなくなった与兵衛は、常日頃から世話になっている同じ油屋のお吉に借金を申し込みに行くが断られ、衝動的にお吉殺しを決意する。

  • 心中宵庚申(しんじゅうよいごうしん) 世話物 1722年初演

  大阪の八百屋の養子半兵衛(はんべえ)の留守中、妻お千世は姑去りで実家へ帰された。半兵衛はそれとも知らず旅の帰りに妻の実家に立ち寄った。お千世を連れて大阪の家へと戻るが、養母への遠慮から従兄弟のもとに預ける。養母から気に入らぬお千世と別れるよう迫られる。姑嫁の折り合いが悪いのを苦しむ半兵衛は養母の前でお千世を離縁し、お腹には五ヶ月の子どもを宿していたお千世を連れて死に場所へと急ぐ。

  • けいせい仏の原(けいせいほとけのはら) 歌舞伎 三番続 1699年初演
      

  越前の国主梅永家の長男文蔵は、三国の遊女今川と子までなした仲であるが、その放蕩を種に、弟帯刀(たてわき)と乾介太夫の計略で流浪の身となる。ある大名の下屋敷に紛れ込んだ文蔵は、かつて馴染みだった遊女奥州と再会するが、そこに許婚の竹姫もおとずれ嫉妬の思いを述べる。悪人たちも文蔵を襲い、父刑部(ぎょうぶ)は討たれるが、文蔵は奥州の助けで逃げのびる。虚無僧姿の文蔵は、今川に会うため三国の廓にやって来るが、かたきの介太夫が今川の実父であることが明らかになる。介太夫は娘のために帯刀を討ち、文蔵は彼を許す。やがて一同は月窓寺の開帳場で落ち合い、梅永家も安泰となる。

文楽と歌舞伎について 

  人形浄瑠璃「文楽」は、太夫・三味線・人形の三業が一体となってつくる演劇です。太夫が語る義太夫の優れた文学性、高い音楽性、芸術性、三味線の豪快な響き、三人で遣う人形の高度で繊細な表現力、また人形の首(かしら)やかつら・衣裳の持つ精緻な工芸性、そして舞台装置・照明・音響効果が複合して作り出す独特な劇場空間の美しさは、見るものを圧倒させます。 このように「文楽」は、日本の誇るべき宝として、また世界でも類を見ない偉大な芸術として評価され、創始期から実に300年と言う歴史を重ね、現代に至っています。
   歌舞伎は、江戸時代初期に上方の庶民の中から生まれた、日本の伝統芸能です。 時の幕府から度々弾圧を受けましたが、その芸風は固定化することを嫌い、能、狂言、文楽などから取り込みながら発展を続け、400年間にわたって愛されてきました。
 歌舞伎の公演は、人気役者、演技、衣裳などの色彩の美しさ、豪華な舞台や仕掛けなど見所がいっぱいです。歌舞伎俳優は、その誕生過程から男性が女性を演じます。これも、大きな特色です。  また、歌舞伎俳優が現代劇やミュージカルに出演する機会も多くいろいろな分野で活躍しています。

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