尼崎のものづくりの明日(市報あまがさき平成26年10月号)

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ページ番号1007201 更新日 令和2年1月29日

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 本市のものづくりは、時代の変化に合わせてその姿を変えてきました。市内で学ぶ学生が企業を訪問し、時流に合わせた本市らしいものづくりとは何かを考えます。詳しくは産業振興課(電話番号06-6489-6448)へ。

ものづくりの先輩、時代を超えるコツを語る(平井工業株式会社)

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私たちが訪問しました

産業技術短期大学(西昆陽1丁目)のものづくり創造工学科で学んでいます。就職率が良く、西日本各地から入学してきます。金属を加工するための数学など、講義は専門的で難しいんですよ。私たちはものづくりの世界への就職を考えています。尼崎では平成23年時点で、約5人に1人が製造業に就いているそうです。一方、同時点で、事業所数は900カ所、従業員数は3万4000人近くにのぼるものの、その数はいずれも減る傾向にあるようです。これからこの世界がどう変わるのか、働くとはどういうことなのか、大先輩にお聞きしました。

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製造業の市内事業所数と従業員数

Q.市内で70年近く操業し、8月には「中小企業新技術・新製品創出支援事業」の認定を受けられました。時代の先を読むコツは何でしょうか

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A.プライドをかけて、新しい素材の加工に挑んできました。その姿勢が時流に乗ることにつながったのかもしれません

 硬度の高い金属の原子を拡散させて接合する「HIP(ヒップ)処理」を金型の先端部に施し、さびや割れが出にくい金型を造ってこられたとお聞きしました。金型が欠けると、製品が変形するので金型が丈夫であることは重要ですね。今回、認定されたのはどんな製品ですか。
平井 今までの金型はセロハンテープのような家庭用品に利用されるフィルムの生産に使われてきました。今回のものは、スマートフォンのディスプレーや太陽電池の部品などに使われます。
小脇 紡績部品の製造に始まり、セラミックやカーボンの研磨など、時流に沿ったものづくりを実践してこられましたが、時代の先を読むコツはありますか。 

平井 「コツ」はないですね。ただ、未知の分野の注文を受けたら、無理と決め付けず「取りあえず、いっぺんやってみよか」という姿勢が大事だと思います。プライドもあって、無理と言うのが気恥ずかしいんですよ。それに新しい素材を見ると加工してみたくなります。
小脇 例えばどんなケースがありましたか。
平井 ある金属の板を均一で真っ平らに加工してくれという注文がありました。無理だと思いましたが、何度も試行の末、成功しました。加工のスピードや熱変化への対応など、微妙な要素が鍵だったんです。こんなチャレンジの積み重ねで「平井ならどうにかしてくれる」と言ってもらえるようになりました。この世界に入るからにはチャレンジを忘れないでください。

平井工業株式会社:昭和23年創業。紡績機械の部品や新幹線の車軸の研削、航空機の設計に関わる実験装置の加工など、さまざまな素材の加工や金型の製作を手掛ける。所在地:兵庫県尼崎市長洲中通2丁目2−6

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先端部にHIP処理を施した金型

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大型の研削機はコンピューターで制御されている

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良い製品造りにメンテナンスは欠かせない

エコなものづくりから未来をのぞく

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私たちが訪問しました

 環境学園専門学校(道意町7丁目)の環境技術保全学科に在籍しています。日本で初めて環境系の専門学校として設立され、全国から学生が集まっています。授業では、生物や化学などのほか、水や空気の検査・分析の方法などを学び、卒業生は環境や化学関係の研究所や企業へ就職しています。
 電源装置の世界で世界的に有名な企業の製品が、「あまがさきエコプロダクツグランプリ」で入賞したと聞き、どんな経緯とコンセプトで製品化されたのかを知りたくて伺いました。

複層ガラスでエコなオフィスに(AGCグラスプロダクツ株式会社)

Q.後付けできる省エネガラス「アトッチ」が平成25年度あまがさきエコプロダクツグランプリに輝きました。アトッチにするとどんなメリットがありますか

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A.オフィスビルで、従来の工法より手軽に複層ガラスを実現し、冷暖房の使用量を削減することができます

【アトッチはオフィスビルの壁などにはめ込まれて開閉できない窓を、遮熱・断熱性の高い複層ガラスにするものですね。ほかの工法とどこが違いますか】
従来は大規模な足場を組み、サッシを取り換える必要がありました。アトッチでは、既存の窓はそのままで、内側から省エネガラスを設置します。足場がいらず、工期を大幅に短縮できます。また、既設のガラスを活用するので、廃材の削減につながります。


【建物の熱の出入りは窓からが一番多いそうですが、アトッチにはどんな効果がありますか】
2枚のガラスの間にスペースができることと、省エネガラスの遮熱効果で、建物全体の冷暖房の使用量を年間30%以上減らすことができると想定しています。


【通常の複層ガラスは工場で造るので均一な製品を生産しやすそうですが、現場で施工するアトッチはどうですか】
複層ガラスにするために、現場で2枚のガラスの間のスペースを均一にする技術を確立するのが大変でした。


【蓬川工場の屋上の3分の1は緑化しているそうですね】
緑化しているところの屋根の表面温度は、していないところより20度も低いんですよ。製品も工場もエコを目指します。

AGCグラスプロダクツ株式会社:平成19年、旭硝子株式会社の子会社として設立。エコ、防犯、防災などの機能が高いガラスを製造。所在地:兵庫県尼崎市道意町7丁目7−1(蓬川工場)

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蓬川工場では、複層ガラスの基となる巨大なガラスを切り分け、1枚ずつ検品する。1日数千枚が近畿や中国地方に出荷されている

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既設の窓ガラスに、建物の内側から取り付ける省エネガラス「アトッチ」

製品を長寿命化してエコに 株式会社ニプロン

Q.寿命が長いことから名付けられた「100年コンバーター」が平成25年度あまがさきエコプロダクツ準グランプリを受賞しました。ほかのコンバーターとどこが違うのでしょうか

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A.寿命が短い部品を使わないことで、通常は7~10年ほどのコンバーターの寿命を延ばすことに成功しました

岡田 コンバーターは電力会社から送られてくる電気を家電製品や産業機械などで利用するために「安定した電流」に変換する装置ですよね。100年コンバーターの開発で苦労された点は何ですか。
田中 100年コンバーターは太陽光発電などに利用されますが、太陽光による電力は火力などによるものと違って、電圧が安定しません。それを安定して供給できるようにすることと、屋外の高温や風雨に耐えられることも求められました。
岡田 具体的に工夫した点は何ですか。
田中 電圧を安定させるコンデンサーや装置を冷却するファンは劣化します。それらの部品を使わないことで長寿命化を実現しました。産業廃棄物の削減にもつながります。
福本 環境に配慮した取り組みはされていますか。
田中 有害物質を含まない部品を使うなどしています。今後はリサイクルのしやすさも考えた製品造りをしていこうと考えています。日常、あまり目にすることのないコンバーターですが、縁の下で、皆さんのエコな生活を支えているんですよ。

株式会社ニプロン:昭和43年創業。耐久性と変換効率の高さを追求した電源装置やその周辺機器を開発、製造。所在地:兵庫県尼崎市大浜町2丁目57

経営者が描くものづくりの明日(株式会社ヤマシタワークス)

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私たちが訪問しました

産業技術短期大学機械工学科に通っています。尼崎で造られる物は、製品の一部となる物が多く、目立たないですね。でも、今回の取材で、私たちの周りには尼崎の高度なものづくりの技を生かした製品がたくさんあり、生活を豊かにしていることを知りました。ものづくりの世界はこれからも激しく変化すると思いますが、挑戦を忘れずに頑張ります。

Q.研磨材を吹き付け、製品の表面を鏡のように磨く鏡面加工の機械「エアロラップ」を用いた専門技術を生かして若い技術者を多く育てていらっしゃいます。どんな企業を目指されますか

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A.人材が宝。家庭を大事にできてこそ、仕事もできる。この2点を大切に、先端技術を取り入れ、需要の高い医療などの分野に進出していきたいと思います

澤池さんが「女性が生き生きと働いていますね」と言うと、山下さんはにっこりして答えました。「細かく労働時間を区切り、生活様式に合わせて働けるようにしています。また、市内からの採用にこだわり、通勤時間を短く、家庭で長く過ごせるようにしています」。
竹村さんが「今後の事業展開は」と問うと、「まずは医療機器ですね。金型に鏡面加工をすると、製品の表面も滑らかになり、ほこりが付かず、雑菌が繁殖しにくくなります。3Dプリンターで成型した製品も側面を鏡面加工すれば、より理想型に近くなりますよ」と答えが返ってきました。
最後に2人にこんな言葉をいただきました。「エアロラップを使えば誰でも研磨できます。ただし、磨く人により精度が違います。だから人材の育成は第一。常に社員と話をし、適材適所を心掛けています。皆さんも最低3年は働いてみてください。どんな会社なのかや、ものづくりの楽しさが分かると思います。それから、僕のように独立するのも良いかもしれません(笑)。結果より挑戦する『過程』が大事ですよ」。

株式会社ヤマシタワークス:昭和61年創業。「エアロラップ」を開発し、特許を取得するなど、金属研磨の世界で業績を伸ばす。所在地:兵庫県尼崎市西長洲町2丁目6−18

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エアロラップでの研磨に竹村さんが挑戦

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半分だけエアロラップで磨いた十円玉

ものづくりのまち・尼崎の歴史を振り返る

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日本の産業史とともに歩んだ本市のものづくりの歴史を紹介します。


始まりは綿花


明治24年、綿花の生産地であった本市南部に紡績工場が建設されました。すでに明治初期には、鉄道などの交通網が整備されていました。
明治42年、国産初の板ガラスの生産工場である旭硝子株式会社尼崎工場が、現在の西向島町で稼働しました。AGCグラスプロダクツ株式会社の蓬川工場は、その縁で立地しています。

大量生産の時代

昭和に入ると、鉄鋼や火力発電などの企業が市内に建設され、発展を遂げました。平井工業株式会社が創業したのもその頃です。大量生産を求められ、ものづくりのまち・尼崎は繁栄しました。

高価で高級な日本製品へ

昭和30年代半ばくらいまで、日本製品は安いけれど粗悪、というイメージでした。しかし、技術革新の競争の結果、「高価だけれど高性能」に転化します。その境界の時代に創業したのが株式会社ニプロンです。工業製品に対するニーズは多様化し、少品種大量生産の時代に突入します。

先端技術を融合して

では、株式会社ヤマシタワークスが創業した昭和60年代はどうでしょうか。日本の製造業は衰退の危機でした。しかし、同社は市内に立地する近畿高エネルギー加工技術研究所と、極小単位で形状を測定できる装置「AMS」を開発するなど先端技術を融合した製品を開発することで発展を遂げてきました。
今回紹介した企業はいずれも日本の産業史とともに発展し、前進しようとしています。

右上写真:手吹き法でのガラスの作成風景(創業当時、旭硝子株式会社尼崎工場にて)

知ってほしい、産業都市としての顔

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本市は市域の両側を流れる川でできた平野部にあるため、豊富な水、平たんな土地、臨海部というロケーションを利用して古くから工業の町として発展してきました。
経済変動や産業構造の変化、国際競争の激化にさらされながら、技術と創意工夫を武器に躍進する企業さんがたくさんいらっしゃいます。


世界に誇れる製品が生まれています

企業を訪問させていただくと、国内で高いシェアを占める製品、ここでしか造れない製品、海外から絶大な信頼を寄せられている製品などがあって感激します。しかも従業員の皆さんはそれをあまり前面に出して主張されず、淡々と正確に作業をこなしておられることが多いのに驚きます。
毎日、市民の皆さんがその横を通っている工場の中で、ものすごいドラマが展開しているかもしれないのに、なかなか今回の記事のように見学したり説明をお願いしたりすることはできないものです。


中小企業の皆さんへ

今回掲載した制度以外にも、省エネ設備導入補助やエコ機器製造融資などのメニューがあります。
ぜひ産業振興課までお問い合わせください。

編集後記

今月号では、ものづくりを学ぶ学生と、市内の事業所を一緒に回った。取材をする中で、どの事業所でも、働くこと、生きることとは何かといった、ものづくりの枠を超えた話が出て、特に印象に残っているのが、株式会社ヤマシタワークスの代表取締役の山下さんが話した「働くことと家庭」に関する話だ。昨今、違法な労働環境のブラック企業に関する報道などが目立っており、学生が企業に対して猜疑心を持っているように感じられる。そういった中、実際に会社を経営している方から、「家庭があってこその仕事」という言葉を聞いて、安心した顔をしたのが印象的だった。

 (担当F)

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