新型コロナウイルス感染症専門家会議による市民と事業者の皆様へのメッセージ
印刷 ページ番号1020475 更新日 2020年3月25日
「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(3月19日公表)より抜粋(全文は添付ファイルをご覧ください)
市民と事業者の皆様へ
(1)3つの条件が同時に重なった場における活動の自粛のお願い
これまでに明らかになったデータから、集団感染が確認された場に共通するのは、1.換気の悪い密閉空間であった、2.多くの人が密集していた、3.近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場ということが分かっています。例えば、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会等での発生が疑われるクラスターの発生が報告されています。
皆さんが、「3つの条件が同時に重なった場所」を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。
(2)感染者、濃厚接触者等に対する偏見や差別について
感染者、濃厚接触者とその家族、この感染症の対策や治療にあたる医療従事者とその家族に対する偏見や差別につながるような行為は、断じて許されません。誰もが感染者、濃厚接触者になりうる状況であることを受け止めてください。
報道関係者におかれましては、個人情報保護と公衆衛生対策の観点から特段の配慮をお願いします。
感染症対策に取り組む医療従事者が、差別等されることのないよう、市民等は高い意識を持つことが求められます。
(3)積極的疫学調査へのご協力のお願い
この感染症との闘いは、今後一定期間は続き、国内で急速な感染の拡大を抑制できたとしても、流行地から帰国する邦人や来日する外国人からの感染も増える見込みのため、さらに警戒を強める必要があります。
感染者、濃厚接触者の方々は、保健所による積極的疫学調査にご協力ください。詳しい行動歴を調査することで感染源を突き止め、他の感染者を早期に発見することが感染拡大の防止のために不可欠となります。
また、事業者におかれましては、集団感染が発生した場合には、その情報を公開することにご協力ください。速やかな情報の公開が、感染者の早期発見につながります。
(4)高齢者や持病のある方など重症化リスクの高い皆様へのお願い
新型コロナウイルスの国内ならびに海外での分析によっても高齢であれば比較的健康であっても感染し、重症化する可能性が高いことがわかっています。また、持病にも様々なものがありますが、できるだけ良好なコントロールをしていただくようにし、また感染リスクを下げるような行動をお願いします。また通常の予防接種も、感染症の複合にならないために重要です。
これまでは外出機会の多かった方におかれましても、今後は感染リスクを下げるよう注意をお願いします。特に、共有の物品がある場所、不特定多数の人がいる場所などへの訪問は避けてください。なお、外出機会を確保することは日々の健康を維持するためにも重要になります。お一人や限られた人数での散歩などは感染リスクが低い行動です。
(5)高齢者や持病のある方に接する機会のある職業ならびに家庭の方へのお願い
高齢者や持病のある方に接する機会のある、医療、介護、福祉ならびに一般の事業者で働く人は一層の感染対策を行うことが求められます。発熱や感冒症状の確認ならびに、感染リスクの高い場所に行く機会を減らすなどの対応が当分の間求められます。これまでの国内外の感染例でも、家庭内での感染の拡大はよくみられています。同居の家族、特に、そのご家庭の高齢者を訪問される際には、十分な体調確認を行った上で、高齢者の方と接していただくようにしてください。
(6)若者世代の皆様へのお願い
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは高くありません。しかし、無症状又は症状が軽い方が、本人は気づかずに感染を広めてしまう事例が多く見られます。このため、感染の広がりをできるだけ少なくするためには、 改めて、3つの条件が同時に重なった場に近づくことを避けていただきますようにお願いします。特に、オーバーシュート(爆発的患者急増)のリスクを高めるのが、「3つの条件が同時に重なる場」を避けにくい状況が生じやすい、「全国から不特定多数の人々が集まるイベント」であることもわかってきました。イベントそのものがリスクの低い場で行われたとしても、イベントの前後で人々が交流する機会を制限できない場合には、急速な感染拡大のリスクを高めますので、十分に注意して行動してください。また、ご自身が新型コロナウイルスに罹患した場合やその家族等が罹患した場合並びに発熱等の風邪症状が見られる場合には、ご自身の経過観察をご自宅で継続するとともに外出を避けるように徹底してください。
(7)医療従事者の皆様へのお願い
今後、患者数の漸増やオーバーシュート(爆発的患者急増)が起こると、感染症指定医療機関等だけでは対応が困難となりますので、多くの医療機関(診療を原則行わない医療機関を除く)が新型コロナウイルス感染症の診療を行うことになります。その際、地域における医療機関ごとの役割分担(軽症者は在宅療養、重症者は高次医療機関、その他は診療所や一般医療機関で診療するなど)を踏まえ、医療ニーズの低減努力(一般患者の外来受診間隔を開ける、ファクス処方の利用、待機的入院・手術の延期等)をお願いいたします。また、各医療機関におかれましては、それぞれの診療継続計画に基づき、医療従事者の適切な配置等をご検討ください。医療につきましては、新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議「平成25年6月26日(平成30年6月21日一部改訂)新型インフルエンザ等対策ガイドライン」の6. 医療体制に関するガイドラインが準用可能ですのでご参照ください。
(8)PCR検査について
新型コロナウイルス感染症においては、医師が感染を疑う患者には、PCR検査が実施されることになっています。また、積極的疫学調査において検査の必要性がある濃厚接触者にもPCR検査が実施されます。このように適切な対象者を検査することで、新型コロナウイルスに感染した疑いのある肺炎患者への診断・治療を行っているほか、
濃厚接触者の検査により、感染のクラスター連鎖をとめ、感染拡大を防止しています。すでに、検査受け入れ能力は増強されており、今後も現状で必要なPCR検査が速やかに実施されるべきと考えています。今後は、わが国全体の感染状況を把握するための調査も必要です。
なお、PCR検査法は優れた検査ではありますが、万能ではなく感染していても陽性と出ない例もあります。したがって、PCR検査のみならず、臨床症状もあわせて判断する必要があります。また、迅速診断法や血清抗体検査法などの導入により、より迅速で正確な診断が期待されています。
(9)大規模イベント等の取扱いについて
2月26 日に政府が要請した、全国的な大規模イベント等の自粛の成果については、その効果だけを取り出した「まん延防止」に対する定量的な効果測定をできる状況にはないと考えていますが、専門家会議としては、以下のような観点から、引き続き、全国的な大規模イベント等については、主催者がリスクを判断して慎重な対応が求められると思います。
全国規模の大規模イベント等については、
1.多くの人が一堂に会するという集団感染リスクが想定され、この結果、地域の医療提供体制に大きな影響を及ぼしかねないこと(例:海外の宗教行事等)
2.イベント会場のみならず、その前後などに付随して人の密集が生じること
(例:札幌雪まつりのような屋外イベントでも、近辺で3つの条件が重なったことに伴う集団感染が生じていること)
3.全国から人が集まることに伴う各地での拡散リスク、及び、それにより感染者が生じた場合のクラスター対策の困難性
(例:大阪のライブハウス事案(16 都道府県に伝播))
4.上記のリスクは屋内・屋外の別、あるいは、人数の規模には必ずしもよらないことなどの観点から、大規模イベント等を通して集団感染が起こると全国的な感染拡大に繋がると懸念されます。
このため、地域における感染者の実情やその必要性等にかんがみて、主催者がどうしても、開催する必要があると判断する際には以下1.~3.などを十分注意して行っていただきたい。
しかし、そうしたリスクへの対応が整わない場合は、中止又は延期をしていただく必要があると考えています。
また仮にこうした対策を行えていた場合でも、その時点での流行状況に合わせて、急な中止又は延期をしていただく備えも必要です。
1.人が集まる場の前後も含めた適切な感染予防対策の実施、
2.密閉空間・密集場所・密接場面などクラスター(集団)感染発生リスクが高い状況の回避、
3.感染が発生した場合の参加者への確実な連絡と行政機関による調査への協力
などへの対応を講ずることが求められます。
(別添「多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例」参照)
(9)事業者の皆様へのお願い
以下の事項に留意して、多様な働き方で働く方も含めて、従業員の感染予防に努めてください。
・労働者が発熱などの風邪症状が見られる際に、休みやすい環境の整備
・テレワークや時差通勤の活用推進
・お子さんの学校が学級閉鎖になった際に、保護者である労働者が休みやすいように配慮
・感染拡大防止の観点から、イベント開催の必要性を改めて検討
・別添「多くの人が参加する場での感染対策のあり方の例」の2)クラスター(集団)感染発生リスクの高い状況の回避のための取組に準じて、従業員の集団感染の予防にも十分留意してください。
・海外出張で帰国した場合には、2週間は職員の健康状態を確認し、体調に変化があった場合には、受診の目安を参考に適切な対応を取るよう職員への周知徹底をしてください。
PDFファイルをご覧いただくには、「Acrobat Reader」が必要です。お持ちでない方はアドビ株式会社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。