所信表明 (平成22年12月15日 第10回市議会定例会)

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ページ番号1008553 更新日 平成30年2月23日

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市長の所信表明の様子

 第10回市議会定例会の開会に当たり、今後の市政運営に対する私の所信を申し上げます。

 

 去る11月21日に執行されました尼崎市長選挙で市民の皆様の信託をいただき、12月12日より、尼崎市長としての重責を担うこととなりました。本当に身の引き締まる思いで、この場に立たせていただいております。
 私が政治に主体的にかかわる原点となりました阪神・淡路大震災でのボランティア活動の経験、証券会社に勤め、営業職や人事部での制度改革に携わった経験、兵庫県議会に送り出していただき、議員として培った経験とネットワーク、そして、小さな企業を営む夫とともに子育てをしながらこのまちで暮らす市民としての実感など、私の持てるすべての力を活かして、皆様とともに、尼崎のまちづくりを進めていきます。
 議員の皆様、市民の皆様には何卒、時に厳しくも、あたたかいご指導、お力添えをいただきますよう、心からお願い申し上げます。
 高度成長時代に大きな発展を遂げた尼崎では今、「成長から成熟へ」という大きな変化への対応が問われています。日本全体を見ましても、政治・経済はいまだ混迷期にあり、人々に安心と希望をもたらす有効な処方箋を見出しきれていない状況ではないかと思います。
 私は今こそ、地方自治体から、市民の皆様とともに尼崎からこそ、成熟社会にふさわしいまちづくりを進め、新しい時代を切り開いていきたいとの決意を新たにしています。
 尼崎市の財政状況は極めて厳しく、私たちを取り巻く環境は甘いものではありません。しかし、本当の課題は、経済が右肩上がりではなくなったことや、少子高齢化そのものではなく、社会の仕組みが新しい時代に対応しきれていないことにあると私は考えています。
 「成熟社会」という新しい時代の到来は、これまで培ってきた有形無形の資産を有効に活用し、本当の豊かさとは何かを見つめ、再構築する大きなチャンスなのではないでしょうか。
 私は、「コンパクトで持続可能なまち」、「信頼と分かち合いのまち」、「市民自治のまち」という三つを柱として、成熟社会にふさわしい、あまがさきのまちづくりを進めていきたいと考えています。

 

 第一は、コンパクトで持続可能なまちづくりです。

 

 尼崎は、京阪神及び奈良へのアクセスに恵まれたまちです。平坦な地形は徒歩や自転車での暮らしに最適です。公園・保育所などの施設整備は阪神間でも高い水準にあり、商業施設や市内産業も発達しています。
 地球に優しい暮らし。職場と家庭が近い暮らし。車に依存しなくても買い物や病院に行ける暮らし。そんな暮らしやすい条件を尼崎は備えています。
 公害の歴史の中での学びと蓄積があり、また、成長の時代を支えた市内産業の中から、環境の時代を先駆ける新しい技術や製品が生まれつつあります。
 成熟社会にふさわしい、「コンパクトで持続可能なまち」をつくり上げていく条件を兼ね備えたまち、それが尼崎です。
 経済のグローバル化が進み、産業構造が大きく変化する中、地域産業の活性化には、時代に対応しようと取り組む企業への適切なサポートはもとより、地域内で人とお金が循環することが必要です。人にも環境にも優しい暮らしと、それを支える産業との共生を目指す「尼崎版グリーンニューディール」に取り組みます。
 我がまちの歴史と未来への可能性を支えている尼崎臨海部では、兵庫県や市民、事業者との協働による「尼崎21世紀の森プロジェクト」や運河再生などの取り組みが進められています。産業、交流、学びの拠点として、尼崎南部の活性化をさらに進めていきます。
 また、コンパクトで持続可能なまちづくりという視点に立って、公共交通のあり方や、老朽化が進む公共施設全般の見直しを進めます。それらの資源を活用していくための財政基盤の整備、時代のニーズに対応した施設の機能向上、公共交通のあり方を総合的、有機的に結びつけながら、取り組んでいく必要があると考えています。
 厳しい財政状況の中にあっても、そのような戦略的で持続可能なまちをデザインすることにより、市民生活の安心、生きがいや文化に支えられた生活の質の向上を目指し、住み続けたいまち、訪れてみたいまちあまがさきを目指していきます。

 

 第二に、信頼と分かち合いのまちづくりです。

 

 尼崎は労働者のまちとして発展し、市民の国籍や出身地は多様で、人情味あふれる気風に支えられています。様々な課題の解決に取り組んできた社会運動の蓄積があり、地縁組織や多様な市民活動が地域を支えています。この地域力は、尼崎の根底を支える何よりも大切な財産の一つです。
 しかし一方で、格差と貧困の問題が日本全国を覆う中、尼崎市民の平均所得は近隣他都市に比べて低く、高齢化の進展と雇用情勢の悪化などにより、生活保護世帯が急増しています。また、誰もが等しく生き生きと暮らせる地域をつくろうという取り組みも、まだその途上にあります。
 私は、貧困や失業など、様々な理由によって人々が社会から排除されてしまうという課題解決に必要なのは、自己責任論ではなく、相互の理解と信頼に基づく、分かち合い、支え合いだと考えています。
 近年、国内外で、「社会的排除から社会的包摂へ」という新しい考え方が取り入れられつつあります。孤立から自立は生まれません。改めて私たち一人一人が想像力を働かせ、相互の理解と信頼を構築していくこと、そして誰もが希望を持ち、安心して暮らせる地域をつくり上げていくことが急務だと考えています。
 そのためには、様々な社会保障制度が、支える側に立っている人々の信頼を得られる公正・公平性を備えていること、その上で、分かち合いと支え合いの仕組みとして十分に機能するものになっている必要があります。
 時代の変化が様々な制度の抜本的見直しを求めている今、人々の暮らしに最も近い基礎自治体からこそ、先駆的な実践と、国や県に対する制度改正に向けての提案や働きかけを積極的に進める必要があると考えています。
 また、尼崎市ではこれまでも、福祉の充実と財政再建の両立をいかに図っていくかが課題とされてきました。私は、少子高齢社会、人口減少社会という現実を冷静に見つめ、将来にわたって必要なサービスを守っていくためにこそ、責任ある行財政運営が求められていると考えています。
 同時に、子育て、教育、医療、介護などの自治体による公共サービスの充実を雇用の拡大と安定やコミュニティの活性化につなげるという視点、時代の変化に対応し、新しいニーズにこたえる施策を実施していくという視点を決して忘れてはならないと思っています。当事者の皆様の意見をしっかりと反映させ、自らも積極的に説明責任を果たして相互理解を促進しながら、対話と参加の中で、施策の再構築を進めていきます。
 保険料の割高感と滞納の増加が顕著な国民健康保険制度については、市民の健康を守り維持するという本来の政策目的を重視しつつ、医療費の適正化を目指しているヘルスアップ尼崎戦略事業に引き続き取り組むとともに、医療保険制度の一体化と支え合いの単位の広域化を強く働きかけていきます。
 雇用と福祉分野における社会環境の整備が緊急の課題であるとの認識の下、就労支援・生活保護の自立支援の充実を進めていきます。
 さらに、経済環境や社会的背景による課題を次世代に連鎖させることなく、すべての子供たちを等しく地域で育んでいくため、子育て支援の充実、生きる力の源となる学力向上のみならず、小中学校連携の強化などによる、子供に寄り添う教育の推進に取り組みます。
 尼崎の持つ魅力と強みである多様性を活かし、あらゆる人権が尊重され、誰もが排除されることなく希望を持って生きられるまち、人と人のつながりがさらに新しい活気を生み出すまちあまがさきを目指していきます。

 

 第三は、市民自治のまちづくりです。

 

 これは、私が政治に携わるようになった原点です。阪神・淡路大震災でのボランティア活動の中で、自らが考え動くことが、たとえ一歩一歩であっても、問題解決につながっていくのだという手ごたえを知りました。無関心だと言われていた若者世代を含め、困難な課題にも自発的にかかわり、支え合う力が私たちの中には備わっているということを実感しました。一生懸命税金を払ってきた被災者の生活が、国の政策によって十分に救済されない現実を目の当たりにしたときには、当事者の実情と私たち納税者の実感が反映される税金の使い方になっていないという憤りを感じました。そして、政治や行政がその責任を果たす重要性と同時に、公平性や安定性が問われる行政の役割にはそもそも限界があり、先駆性や柔軟性を強みとする市民の活動が私たちの社会には必要だということも痛感しました。
 尼崎には、大きな変化を生み出してきた市民の力があります。私は、新しい時代をチャンスに変えていく力も、市民の中にこそあると確信しています。かねてより地方分権がクローズアップされ、地域主権を掲げる新政権が誕生してなお、分権改革はまだ緒に就いたばかりと言わざるを得ませんが、尼崎からこそ、行政からの押しつけではない市民主権に基づくまちづくりを市民自らが担い、動かすまちづくりを進めていきたいとの思いを強くしています。
 財政再建が重要課題となっている尼崎市ですが、その財源はそもそも市役所のお金ではなく、市民のお金です。まずどれだけのお金をどのような事業に使っているのかについての情報を分かりやすく発信します。無駄を無くし、事業を棚卸しするための事業仕分けを行い、優先順位をともに考え決めていきます。その上で、コストの削減を重視した民営化ではなく、民間の強みと質を重視した提案型公共サービス民営化制度の導入と、その推進の中心となる社会的事業の担い手の育成、支援を進めていきます。この取り組みは、市民による多様なサービスの向上や市内における雇用の創出だけではなく、市役所の仕事の質を問い直すことにもつながります。職員の仕事の中身と待遇とのバランスや縦割り行政に代表される仕事のあり方についても、市民の皆様の信頼を得られるよう見直しを進めていきます。
 また、身近な場所で、市長や職員が市民の皆様と対話する機会をさらに充実させていくとともに、パブリックコメントなどの制度が形骸化することのないよう、重要で影響の大きな政策については、政策形成過程における複数案提示の取り組みを進めていきます。
 そして、自治のまちづくりの次世代を担う子供たちに実感と手ごたえのきっかけをつくっていくためのシチズンシップ教育を進めていきます。
 「何を言っても、何をしても変わらない」ということが続けば、人は前向きに頑張ろう、主体的に取り組もうという意欲を持ち続けることはできません。市民が主権を発揮できるまち、市民自らが自発的に担い、動かすまちづくりを進めていきます。
 財源が限られているなら、お金の使い方とやり方を前例にとらわれず変えていきたいと思っています。尼崎の持つ可能性を見つめ、未来に希望を持って挑戦を続けます。
 尼崎には数多くの強みと魅力があります。私は尼崎からこそ、時代の変化をリードする成熟社会にふさわしいまちを、そして未来を築くことができると確信しています。
 丁寧な対話と参加によるまちづくりを進め、皆様とともに歩んでまいります。私はこれまで、「まず自分から」という信念で何事にも取り組んでまいりましたが、今後の市政推進に当たりましても、その姿勢と初心を忘れることなく全力を尽くしていきます。

 以上、私の目指すまちづくりの方向性と、そのために必要だと考える施策の一端について、思うところを述べさせていただきました。

 市民の皆様、議員の皆様のご指導とお力添えを心からお願い申し上げまして、私の就任あいさつとさせていただきます。

平成22年12月15日

 尼崎市長 稲村 和美

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